第31回介護福祉士国家試験(平成30年度) 問題87
ノーマライゼーション(normalization)の理念を8つの原理にまとめた人物として,正しいものを1つ選びなさい。
1 ニィリエ(Nirje, B.)
2 バンク-ミケルセン(Bank-Mikkelsen, N.)
3 ヴォルフェンスベルガー(Wolfensberger, W.)
4 ロバーツ(Roberts, E.)
5 ソロモン(Solomon, B.)
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正解:1
これ、ノーマライゼーションといえば、ノーマライゼーションの父であるバンク=ミケルセン!
と、どや顔でチェックした人もたくさんいたと思います。が、正解は1のニィリエ。
バンク=ミケルセンはノーマライゼーションを提唱した人物で、8つの原理にまとめたのがこのニィリエです。
ノーマライゼーションの8つの原理は以下の8つになります。
- 一日のノーマルなリズム
- 一週間のノーマルなリズム
- 一年間のノーマルなリズム
- ライフサイクルにおけるノーマルな発達的経験
- ノーマルな個人の尊厳と自己決定権
- その文化におけるノーマルな経済水準とそれを得る権利
- その社会におけるノーマルな経済水準とそれを得る権利
- その地域におけるノーマルな環境形態と水準
ここまで覚える必要はないと思います。
ただ、ノーマライゼーションで人名ということで、問題文をきちんと読まずに回答してしまう人も多かったでしょうから、問題文はしっかり読むようにしましょう。
第31回介護福祉士国家試験(平成30年度) 問題88
世界保健機関(WHO)によるリハビリテーションの定義で,「利き手の交換」が該当するものとして,適切なものを1つ選びなさい。
1 職業的リハビリテーション
2 医学的リハビリテーション
3 経済的リハビリテーション
4 教育的リハビリテーション
5 社会的リハビリテーション
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正解:2
リハビリテーションは4つの領域に分かれます。
■医学的リハビリテーション
■社会的リハビリテーション
■教育的リハビリテーション
■職業的リハビリテーション
今回の問題文のような利き手を交換するというのは、主には作業療法士が中心となったチームで行う医学的リハビリテーションに該当します。
特に利き手の交換なんて、日常生活すべてに影響しますよね。
社会参加を目的とした社会的リハビリテーション、
学校教育を中心とした障碍児・者に対する教育的支援を教育的リハビリテーション、
職業復帰や就職、雇用の継続などを目的とした職業的リハビリテーションに分かれています。
第31回介護福祉士国家試験(平成30年度) 問題89
対麻痺を生じる疾患として,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)
2 腰髄損傷(lumbar spinal cord injury)
3 悪性関節リウマチ(malignant rheumatoid arthritis)
4 パーキンソン病(Parkinson disease)
5 脊髄小脳変性症(spinocerebellar degeneration)
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正解:2
対麻痺というのは左右のどちらか片側に麻痺が出る片麻痺と違い、左右両側対象の下肢麻痺が出現することを言います。
となると、脊髄損傷になるわけで、このなかでは腰髄損傷になります。
身体障害の方の支援をしている方であれば簡単に答えられる問題ではないかと思います。
交通事故などで下半身不随になるケースなどをよくドラマでも見ますよね。そんなイメージを持っていただくとわかりやすいかと思います。
第31回介護福祉士国家試験(平成30年度) 問題90
統合失調症(schizophrenia)の特徴的な症状として,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 妄想
2 躁うつ
3 強迫観念
4 振戦せん妄
5 見捨てられ不安
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正解:1
統合失調症の場合、妄想や幻覚があります。
よく、レーザー光線で狙われているとか、何らかの組織に付け回されているとか、そういった特徴的な陽性症状が生まれます。
陽性症状が強いときと、陰性症状が強いときが繰り返す傾向がありますが、内服による治療で回復されるケースもかなり多くなっているようです。
第31回介護福祉士国家試験(平成30年度) 問題91
知的障害の特徴に関する記述として,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 成人期に出現する。
2 てんかん(epilepsy)の合併率が高い。
3 有病率は女性が高い。
4 重度・最重度が大半を占める。
5 遺伝性の障害が大半を占める。
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正解:2
これは2ですね。
脳の障害によるてんかんと知的障害は合併率が高いです。
特に重度の身体障害と知的障害を併せ持つ重症心身障碍児者で寝たきりの方の場合はてんかんの合併率が非常に高く、80%ほどと言われています。
第31回介護福祉士国家試験(平成30年度) 問題92
発達障害者が一般就労に向けて利用するサービスとして,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 行動援護
2 就労定着支援
3 職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援
4 同行援護
5 就労継続支援B型
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正解:3
きっと障害者の就労については今後も非常に重要なテーマなので、出題される可能性は高いと思います。
「一般就労に向けて」と書いていますので、この問題は3です。
5の就労継続支援というのはいわゆる作業所のことで、そのうちB型というのは利用者と事業所との間で雇用契約を結ばないという形態になります。そのため、設問でいうところの一般就労には該当しません。
就労定着支援は就労後が対象になります。
それ以外に一般就労に向けてのサービスとしては就労移行支援などが考えられると思います。
第31回介護福祉士国家試験(平成30年度) 問題93
網膜色素変性症(retinitis pigmentosa)の初期の症状として,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 硝子体出血
2 口内炎
3 眼圧上昇
4 夜盲
5 水晶体の白濁
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正解:4
網膜色素変性症の初期症状としては、夜や暗い所で見えなくなる夜盲や鳥目といわれる症状が有名です。
また、視野が狭くなっていくという症状も現れます。
他にも視力の低下や色覚異常などをきたすといわれています。
第31回介護福祉士国家試験(平成30年度) 問題94
上田敏による障害受容のステージ理論の5つの心理過程のうち,最初の段階として,正しいものを1つ選びなさい。
1 受容期
2 否定期
3 ショック期
4 混乱期
5 解決への努力期
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正解:3
上田敏による障害受容のステージも出題されることもあります。平成29年の介護福祉士国家試験でも出題されていました。
問題 92 障害受容過程の「ショック期」に関する次の記述のうち、適切なものを1つ選びなさい。
1 現実を実感することが難しい。
2 抑うつ反応を示す。
3 自らの努力が必要だと気づく。
4 他人に感情をぶつける。
5 障害を受け止めることができる。
平成29年介護福祉士国家試験
最初の段階はショック期です。
そのあと、否認期→混乱期→ 解決への努力期→受容期 という流れで学習した人が多いと思います。
ただ、これもスムーズに流れるものではなく、戻ったり繰り返したりすることもありますので、かならず順序良くその段階を経るというわけではありません。
第31回介護福祉士国家試験(平成30年度) 問題95
関節リウマチ(rheumatoid arthritis)の人の日常生活上の留意点として,適切なものを1つ選びなさい。
1 いすは低いものを使う。
2 膝を曲げて寝る。
3 かばんの持ち手を手で握る。
4 ドアの取っ手は丸いものを使う。
5 身体を洗うときはループ付きタオルを使う。
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正解:5
リウマチに関する問題はこれまでもよく出題されています。
ループ付きタオルというのはこういったものです。
握ってつかむこと難しいため、手にくくったりひっかけたりすることで両手で離すことなく背中を洗うことなどができるようになります。
第31回介護福祉士国家試験(平成30年度) 問題96
右利きのCさん(73 歳,男性)は脳伷塞(cerebral infarction)を発症して,回復期リハビリテーション病棟に入院中である。左片麻痺のため,歩行は困難である。他の患者とも交流せず,病室に閉じこもりがちであったため,多職種チームによるカンファレンス(conference)が開かれた。
現時点のCさんへの対応として,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 利き手の交換
2 階段昇降訓練
3 義足の製作
4 プッシュアップ訓練
5 心理カウンセリング
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正解:5
問題文をちゃんと読めば、なぜ多職種チームによるカンファレンスを行ったかが書いてあります。
他の患者とも交流せず,病室に閉じこもりがちであったため,多職種チームによるカンファレンス(conference)が開かれた。
閉じこもりがちになっていることに対するアプローチを検討しているんですよね。
病院内なので、移動にバリアーはないでしょうし、下肢を欠損しているわけでもないので義足も必要ありません。利き手がどっちかも書いていないのに利き手の交換とか、ありえないでしょうね。
であれば、この中で考えられるのは5しかないでしょうね。
障害の理解のポイント
ということで、障害の理解でした。
介護福祉士国家試験を受験する人は高齢者分野で働いている人の方が多いと思います。
高齢者分野で働いている方としては苦手分野になると思いますが、この分野の10問のうち、少なくとも一問は正解しないと分野での加点がないため合格基準点をクリアしていても不合格になります。
落ち着いて文章を理解して問題を回答するようにしましょう。
高齢者分野でも、共生型サービスという枠組みの中で、介護保険サービス事業所に障害の方を受け入れることもできるようになりました。
また、ケアマネなど相談職は「断らない相談支援」というキーワードが重要視されていますので、障害の分野だから、高齢の分野だからということではなく、そのどちらの知識も併せ持つ介護職が求められていると考えられます。
とにかく範囲が広い分野です。身体障害・知的障害・精神障害など、それぞれの障害特性やそれに対応するサービス名についてもある程度理解をしておくようにしましょう。
また、今回は出題されていませんが、脳梗塞や高次脳機能障害などについても出題頻度が高いので注意しましょう。
また、出題される黄銅ともいえる適応機制もこの分野で出題されることが多くなっていますので、これもチェックしておきましょう。