平成31年1月27日、今日は介護福祉士国家試験が日本全国で行われています。
すでに午前の部が終了し、午後の部を迎えております。
午前の問題で最大のサプライズは間違いなくこの問題でしょう。
問題54
Dさん(84歳、女性、要介護3)は認知症(dementia)があり、訪問介護(ホームヘルプサービス)を利用している。ある日、Dさんが、訪問介護員(ホームヘルパー)と一緒に衣装ケースを開けたところ、防虫剤がなくなっていた。Dさんは、新しいものを補充してほしいと訪問介護員(ホームヘルパー)に依頼したが、防虫剤の種類や名前はわからないという。
この衣装ケースに補充する防虫剤の種類として、最も適切なものを一つ選びなさい。
平成30年度介護福祉士国家試験 問題54
へえええ・・・
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果たして、介護福祉士国家試験に本当にふさわしい問題なのかはとりあえず置いておいて、この問題の正答をまずは探っていきましょう。
「しょうのう」はクスノキを原料にした天然の防虫剤です。
商品としても売っています。
でも、ホームヘルパーが買いに行けるスーパーに売っているとも思えないのですが、どうなんでしょう。
効果は六か月持続するということと、独特の香りがあるということで、和服用のものもあります。
ただ、注意しなければいけないのはその毒性です。
日本中毒情報センターより
■毒性
最も毒性が高く危険です。
■症状
食べて5~90分後に吐き気、嘔吐、興奮状態やめまいを生じます。大量の場合は突然のけいれんや、腎臓や肝臓への障害が出ます。
■事故が起こったら
なめただけなら、様子をみます。
牛乳を飲ませてはいけません。
かけら程度でも飲んでいる場合にはすぐに受診します。けいれんを誘発するので吐かせてはいけません。
結構な毒性の強さですね。
そう。
この問題は、どれが防虫剤として適しているかではなく、利用者が認知症であるという特徴を踏まえ、安全なものを選ぶという問題なのです。
ナフタリンも防虫剤です。
商品としてはネオパースやわらべなどが該当します。
昔はこのナフタリンの防虫剤が一般的だったようです。
芳香族炭化水素の一つで、人形用の防虫剤にもよく使われます。
特徴としては、効果が長続きするのと、強いにおいではありませんが、穏やかなにおいがします。
ただ、これも毒性が強いものですね。
日本中毒情報センター
■毒性
毒性が高く、かけら程度の量でも危険です。
■症状
吐き気、嘔吐、腹痛や下痢、発熱や発汗、顔面の紅潮が生じます。大量の場合は、血液や腎臓への障害が出ます。症状は1~2日遅れて現れることがあります。
■事故が起こったら
なめただけなら様子をみます。
牛乳を飲ませてはいけません。
かけら程度でも食べている場合にはすぐに受診します。
ということで、これも不正解です。
これももちろん防虫剤です。
効果の強さが特徴で、商品でいうと、ネオパラやパラゾールがそれですね。
ただ、これもやはり毒性が強いものとなっています。
日本中毒情報センター
■毒性
小さなかけら程度ならあまり問題ありません。
■症状
食べて1~2時間後に吐き気、嘔吐、腹痛や下痢を起こします。大量の場合は肝臓に障害が出ることもあります。
■事故が起こったら
小児では碁石状の製品で1/4個までなら家庭で様子を観察します。
牛乳を飲ませてはいけません。
大量の場合はすぐに受診します。
有機塩素系殺虫剤 で効果が強いといわれており、防臭効果もあるのでトイレの防臭剤などにも使われているようです。
一番馴染みのある名前がこれだったと思いますが、シリカゲルです。
食品の袋の中に入っていますよね。
でもシリカゲルは防虫剤ではなく、乾燥剤です。
つまり、この問題の中で、シリカゲルだけは防虫剤ではないということです。
もちろん、口に入れちゃいけないですけどね。
最後です。
ピレスロイド系の防虫剤としては、ムシューダ、ゴン(タンスにゴン)、ミセスロイドなどが商品として販売されています。
ピレスロイドと聞いて、ミセスロイドを思い出したあなたはラッキーかもしれません。
においがつかない、というのがこのピレスロイド系の特徴ですね。
そして、安全性が高いことも大きな特徴です。
ピレスロイド系の殺虫成分は、昔から蚊取り線香の原料として使われていたシロバナムシヨケギク(除虫菊)の成分に似ているもので、虫の神経系に作用して殺虫効果を示しますが、人体に対しての毒性は低いものになっています。
においの少なさと、安全性からいまは一般的な防虫剤となっています。
ということで、この問題の正解は、ピレスロイド系の5番になります。
結論が出たところで、もう一度いいます。
防虫剤の商品名で選ぶことはあっても、防虫剤の成分や種類で選ぶということは日常生活の中ではほぼないでしょう。
もし買い物に行くとしても、商品の裏面の注意書きなどを確認し、安全性が高いものを判断して購入するでしょうし、それを記憶しておく必要があるのかどうか。
そして、それが介護福祉士として本当に必要な能力かというと、はなはだ疑問です。
はっきり言って、単純にこの問題は、正答率を下げるためだけの問題です。
こんな問題を出しておいて、国家試験の正解率が下がっているのは質の低下だとか言われても納得がいきません。
介護福祉士のカリキュラムにはまったくありませんが、やはり介護福祉士だけでなく、介護職全般のストレスマネジメントや健康管理は非常に大きな問題だと思っています。
アンガーマネジメントができない、事故の体調管理ができない、腰痛を繰り返すなど、介護職が自身の身を守る技術を理論として身に着け、それを幅広く伝えていくことがスキルとして求められるように思います。
介護職の自己犠牲を求めるような問題ばかりではなく、介護職自身をセルフケアすることも介護福祉士のカリキュラムとして盛り込むべきで、防虫剤の種類を問うなんて問題はただただナンセンスだとしか言いようがないと思います。
84歳の女性の生活歴を考えば、今のケースの中に昔のものかもしれない。文章により全部無かったことをわかった。それはしょうのうの特点で揮発するんです。また、天然なしょうのうは、毒がないです。東京福祉専門学校の学生より
ピレスロイド系の中には、内分泌かく乱作用を持つ物質や、神経毒性作用を示す物質も含まれていることから、ヒトの健康への影響が懸念されているにも関わらず、ピレスロイド系の防虫剤だけが正解なのは、とても疑問❗天然素材アロマの中には無害な防虫剤があるのに❗これ迄、多くの犠牲を払って、この一問で、不合格者が出たら、本当に気の毒です
これは防虫剤を「補充」という点がポイントではないでしょうか。元々使っていたものがどのような成分か分からないと、補充したものとの組み合わせによっては残留成分が(あった場合)干渉して衣類にシミを作る原因になるそうです。ピレスロイド系はそういった面で最も影響しにくいから正解、というますます「知るかそんなの」な説があるようです。
うーん、ますます納得できない問題ですね。
こんな問題で一年間を棒に振ってしまう受験者を出してしまう可能性があることをわかっていて出題しているんですかね。
コメントどうもありがとうございます。