第31回介護福祉士国家試験(平成31年度) 問題17
2012年度(平成24年度)「高齢者の健康に関する意識調査結果」(内閣府)の介護を受けたい場所に関する次の選択肢のうち,最も多かったものを1つ選びなさい。
1 「子どもの家で介護してほしい」 2 「介護老人福祉施設に入所したい」 3 「自宅で介護してほしい」 4 「病院などの医療機関に入院したい」 5 「民間の有料老人ホームなどを利用したい」
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正解:3
正解は3です。
でも、調査によってはいろいろな結果があって、子供たちに迷惑をかけたくないという調査結果があったり、最期は自宅ではなく病院で迎えたいという調査結果があったり、調査の仕方によっていろいろですね。いろんなバイアスがかかって、調査結果が生み出される。それが意識調査というものです。
じゃあ、どうやったらそれを見極めることが出来るのか。
答えは簡単です。
出題者の意図を理解することです。
この試験は介護福祉士国家試験です。国家試験です。
国の思惑や方針と大きくかけ離れた内容の正解を出すわけがないのです。
つまり、国としては、介護が必要になったときにどこで過ごしてほしいのかを説いていると思って、この問題を見るようにしましょう。
となると、施設や病院では国や保険者が負担しなければいけないコストが大きくなる。今後もやはり在宅の限界地を可能な限り引き上げ、できるだけ在宅で暮らしてもらいたいというのが国の本音です。さらに、貴重な労働力を減らしたくないので、子供の家で貴重な生産者である子供(特に女性の社会進出を進めていきたいということで嫁)が介護に追われるという状況を避けたい。
となれば、正解は3以外にないのです。
第31回介護福祉士国家試験(平成31年度) 問題18
社会福祉士及び介護福祉士法における介護福祉士の義務として,適切なものを1つ選びなさい。
1 家族介護者の介護離職の防止 2 医学的管理 3 日常生活への適応のために必要な訓練 4 福祉サービス関係者等との連携 5 子育て支援
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正解:4
社会福祉士及び介護福祉士法には介護福祉士の義務についてこのように定めています。
誠実義務
信用失墜行為の禁止
秘密保持義務
連携
資質向上の義務
名称の使用制限
これらのうち、出題の中にあるのは連携の部分ですよね。
よって、正解は4です。
連携というと、ケアマネジャーや社会福祉士の仕事と思いこんでしまう方もいるかもしれませんけどね、介護福祉士も現場のリーダーとして様々な機関と連携をしていくことが求められます。
第31回介護福祉士国家試験(平成31年度) 問題19
茶道の師範だったFさん(87歳,女性,要介護3)は,70歳の時に夫を亡くし,それ以降は一人暮らしを続けていた。79歳の頃,定期的に実家を訪ねていた長男が,物忘れが目立つようになった母親に気づいた。精神科を受診したところ,アルツハイマー型認知症(dementia of the Alzheimerʼs type)と診断された。昨年から小規模多機能型居宅介護を利用しているが,最近は,宿泊サービスの利用が次第に多くなってきている。Fさんは来所しても寝ていることが多く,以前に比べると表情の乏しい時間が増えてきている。 介護福祉職がFさんの生活を支えるための介護として,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 Fさんが安心して暮らせるように,長男に施設入所を勧める。 2 夜間に熟睡できるよう,日中は宿泊室に入らないように説明する。 3 長く茶道を続けてきたので,水分補給は緑茶に変更する。 4 心を落ち着かせるために,読書を勧める。 5 茶道の師範だったので,お茶のたて方を話題にする。
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正解:5
いきなり茶道の師範だったというところから書き始めるあたり、ここに絡めた解答が来そうな匂いがプンプンですよね。
もし脱水症状が強いということであれば3も可能性がありそうですが、お茶の師範をしていたからといって必ずしも緑茶が好きかというとそうでもないみたいですしね。
1の長期入所はまずないとわかると思います。
2の日中は宿泊室に入らないようにというのも、泊りの利用が増えているということで宿泊室がプライベートスペースに近いものになっているということを考えれば、これもないでしょうね。もちろん日中を活動的に過ごすことはいいことですけどね。
で、4と5のどちらかといったら、やはり本人の興味関心や生活歴を生かしたかかわり方をする意味でも5が正解になります。
この問題、選択肢1以外は別に絶対間違いってわけではなさそうなのであくまで生活を支える介護として最も適切なものを選ぶとしたら5ということですよね。
第31回介護福祉士国家試験(平成30年度) 問題20
Gさん(68歳,女性,要介護2)は,小学校の教員として定年まで働いた。Gさんは,3年前にアルツハイマー型認知症(dementia of the Alzheimerʼs type)と診断された。夫は既に亡くなっており,長男(30歳)と一緒に暮らしている。週に2回通所介護(デイサービス)に通い,レクリエーションでは歌の伴奏をよくしている。その他の日は,近所の人や民生委員,小学校の教え子たちがGさん宅を訪問し,話し相手になっている。 最近,Gさんは食事をとることを忘れていたり,トイレの場所がわからず失敗したりすることが多くなった。
介護福祉職が,Gさんの現状をアセスメント(assessment)した内容と,ICF(International Classification of Functioning,Disability and Health:国際生活機能分類)の構成要素の組合せとして,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 アルツハイマー型認知症(dementia of the Alzheimerʼs type)は,「心身機能・身体構造」にあたる。 2 レクリエーションで歌の伴奏をすることは,「参加」にあたる。 3 近所の人や民生委員,小学校の教え子は,「個人因子」にあたる。 4 小学校の教員をしていたことは,「環境因子」にあたる。 5 トイレの場所がわからなくなることは,「健康状態」にあたる。
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正解:2
さあ出ました、ICF問題。
ICFについては毎回出題されますので、しっかり理解しておきましょう。
自分で図を描いてみて、ちゃんと説明できるかどうかを試してみてもいいと思います。
たとえば担当している利用者さんについて、一度ケースカンファレンスなどでICFの概念図に合わせてその利用者さんを人に説明するなんてことをやってみると、ICFの考え方がある程度わかるようになると思います。
なかなか介護の現場の実務でICFで利用者さんをアセスメントするということは少ないと思いますが、考え方を知っておくことは役立つと思います。
ちなみに、1のアルツハイマー型認知症であることは「健康状態」にあてはまります。
4の小学校の教員をしていたことというのは、その人の生活歴になりますので、個人因子になります。
第31回介護福祉士国家試験(平成30年度) 問題21
定期巡回・随時対応型訪問介護看護に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 このサービスのオペレーターは,サービス提供責任者のことである。 2 利用者の状態の変化に応じて,随時訪問サービスを利用することができる。 3 介護・看護一体型では,訪問看護サービスを利用しても介護報酬は同一である。 4 日常生活上の緊急時の対応は行っていない。 5 要支援者,要介護者のどちらも利用できる。
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正解:2
一般的に「定期巡回」と呼ばれることが多いので、巡回訪問でオムツ交換をしていくようなイメージを持っている方も多いと思いますが、随時対応もセットになっていることが重要です。
でも、実際に個のサービスが必要な状態の人って、自分でコールボタンを押したりしてオペレーターにつなぐこと自体が難しかったりするので、定期巡回のみのサービスになってしまったりしますよね。
緊急時の対応も行いますので、4番も誤りだとわかります。ベッドから落ちて立ち上がれないとか、車椅子から落ちちゃったとか。
あと、5番ですが、要支援の方は利用できません。基本的に介護度が3・4・5など、重度の利用者が在宅での生活が継続できることを目的としたサービスです。わかりやすく言うと、在宅の限界値を上げるためのサービスですね。要支援だけど、月極料金で随時対応が使えるんだったらいくらでも呼んでしまおうなんてことはできません。
問題 22 防災に関する次の図記号が意味している内容として,正しいものを1つ選びなさい。
1 避難所 2 避難場所 3 土石流注意 4 地滑り注意 5 津波注意
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正解:2
おそらく直感的に、走っている様子だと言うのがわかると思うので、おそらく逃げているサインなんだろうと思いますよね。
落とし穴注意に見えなくもないのですが、まぁ、そうそう落とし穴ないですからね。
ということで、避難場所なのか、避難所なのか。という2択にたどり着いた人は多かったんじゃないでしょうか。
正解は避難場所です。
似たようなサインでこのようなものもよく見ると思います。
左は非常口。映画館とかよく行く人は見ているかと思います。
右が避難所。建物の中に入っていますね。
避難所は学校や公民館といった地域の公共施設で、避難場所は公園や空き地などが一般的ですよね。そういう見方で見ると、ほら、避難場所のサインの足元の円形が落とし穴ではなくて公園に見えなくもないのでは・・・。無理か。
この問題、これが分野では「介護の基本」の分野の出題なのですが、「介護の基本」かと言われるとどうかと思いますが。
第31回介護福祉士国家試験(平成30年度) 問題23
介護福祉職の職務上の倫理に関する次の記述のうち,適切なものを1つ選びなさい。
1 おむつ交換をスムーズに行うために,利用者の居室(個室)のドアを開けておいた。 2 訪問介護(ホームヘルプサービス)中に携帯電話が鳴ったので,電話で話しながら介護した。 3 ベッドから転落した利用者が「大丈夫」と言ったので,そのままベッドに寝かせた。 4 利用者から,入院している他の利用者の病状を聞かれたが話さなかった。 5 利用者が車いすから立ち上がらないように,腰ベルトをつけた。
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正解:4
これはプライバシー保護に関するものや虐待防止など、権利擁護に関する質問ですよね。
消去法で考えた人も多いと思います。
1番の個室のドアを開け放つというのは、緊急的に必要性があればまたとらえ方も違うと思いますが、一切そんな様子がないのでこれは×ですね。
ホームヘルプサービス中に携帯電話が鳴ったので電話で話しながら介護したと、これもないでしょうね。訪問先は利用者さんの自宅なので、許可を得て電話をすることはあるでしょうけれど、電話しながら介護はないでしょう。
3番の大丈夫といったので寝かせたというのも、大丈夫の根拠がどこにあるのか、本当に大丈夫なのかは確認する必要がありますので、これも×でしょう。
5番は腰ベルトが身体拘束にあたるかどうかという視点で見ればこれも×でいいかと思います。
ということでここは4番。利用者にほかの利用者のこと聞かれることもあると思います。デイサービスで、あの人しばらく休んでるけどどうしたの?とか、聞かれることありますよね。さらっと答える人もいると思いますが、あくまで、原則的には個人情報にあたりますので配慮が必要ですよね。「話さなかった」というちょっと冷たい感じの印象を与える書き方をしているのが曲者ですね。
第31回介護福祉士国家試験(平成30年度) 問題24
施設の介護における安全の確保に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 職員に対して安全に関する研修を定期的に行う。 2 施設管理者の安全を第一に考える。 3 利用者の社会的な活動を制限する。 4 利用者に画一的なサービスを提供する。 5 安全対策は事故後に行う。
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正解:1
答えは1でしょう。いや、解説するまでもなく1以外にあり得ないでしょう。
2の施設管理者の安全を第一に、ってもちろん管理者の安全も職員の安全も利用者の安全も必要ですけれど、管理者を第一に考えなければいけないかというとそうではないですよね。
社会活動を制限するとか、画一的なサービスにしようとか、こんな文章が出てきたら、それまでの文章の前提がどうであったとしてもこれは×でしょう。
安全対策は事故後に行うことも大事です。同じような状況での事故を回避するためにも検証することは非常に重要ですが、事故前にも行うことは当然必要ですよね。
介護現場はリスクがいくらでもありますので、リスクマネジメントをすることもリーダーシップをとる介護福祉士としての役目でもありますね。
第31回介護福祉士国家試験(平成30年度) 問題25
介護老人福祉施設の感染対策に関する次の記述のうち,適切なものを1つ選びなさい。
1 感染対策のための委員会を開催することは任意である。 2 手洗いは,消毒液に手を浸して行う。 3 洗面所のタオルは共用にする。 4 入所者の健康状態の異常を発見したら,すぐに生活相談員に報告する。 5 おむつ交換は,使い捨て手袋を着用して行うことが基本である。
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正解:5
おむつ交換は素手でやっています、っていう施設、昔はあったんですよね。さすがに今はないと思いますけど。
1番の感染対策委員会はどこの施設でもやっていますね。
2番は手を浸して行うのではなく、流水で行います。
3番のタオル共用はもちろんNGですね。
4番は絶対間違いではないんですよ。間違いではないですけど、看護師がいるのですから看護師に相談ですよね。
第31回介護福祉士国家試験(平成30年度) 問題26
燃え尽き症候群(バーンアウト(burnout))の特徴として,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 首から肩,腕にかけて凝りや痛みが生じる。 2 人格・行動変化や失語がみられる。 3 無気力感,疲労感や無感動がみられる。 4 身体機能の低下がみられる。 5 日中に耐え難い眠気が生じる。
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正解:3
介護福祉職のメンタルケアについての問題ってあまりないですよね。試験問題にこういったメンタルケアやストレスマネジメントなどを加えていくことで、介護職が自分で自分を守るすべを身に着けていくことも期待したいですね。
この問題の選択肢はどれもあり得そうですが、一番は無気力感・疲労や無感動という状態ですので、3が正解です。
介護の基本といいながら、ちょっと深い内容まで突っ込んでいくのが介護福祉士国家試験。厄介ですね。
介護の基本のポイント
「介護の基本」という分野ながら、本当に基本なのかと腹立たしく感じるくらい癖のある問題が多かったりするのがこの介護の基本。
介護職員が自分自身を守るための技術なども出題になっており、感染対策や防災なども出題の範囲となっています。
サービス種別についての質問など、普段の業務となじみのない内容も出題されることが多いです。
もうわかったかと思いますが、介護の基本という分野であっても絶対に基本ではありません。
問題数も多く、癖のある問題も多いので、この中で半分以上とれていたらいいなくらいの気持ちでいいんじゃないかなと思います。