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第31回介護福祉士国家試験過去問題 コミュニケーション技術

コミュニケーション技術

第31回介護福祉士国家試験(平成30年度) 問題27

利用者とのコミュニケーションにおいて逆転移が起きている事例に該当するものとして,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 自分が利用者を嫌いなのに,利用者が自分を嫌っていると思い込む。
2 亡くなった祖母と似ている利用者に,無意識に頻繁に関わる。
3 利用者に対する不満を直接ぶつけずに,机を強くたたいて発散する。
4 敬意を抱いている利用者の口癖を,自分もまねて用いる。
5 利用者に対する嫌悪の感情を抑え,過剰に優しく利用者に接する。

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正解:2

転移は言い換えれば治療者と患者の間に起こる感情移入です。

患者側が治療者側に感情移入することが転移。

治療者側が患者に感情移入することは逆転移です。

この問題では、亡くなった祖母に似ていることから親近感を感じ、無意識のうちに頻繁にかかわるようになったということから、この現象は逆転移であると考えられます。

現場で介護職として関わる中でも、無意識に親近感を感じる利用者さんっていると思うんですよね。

適応規制とはちょっと違いますが、これも覚えておきましょう。


第31回介護福祉士国家試験(平成30年度) 問題28

介護福祉職が行う傾聴に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 利用者が抱いている感情を推察する。
2 利用者が話す内容を介護福祉職の価値観で判断する。
3 対話の話題を介護福祉職の関心で展開する。
4 利用者が体験した客観的事実の把握を目的とする。
5 利用者が沈黙しないように対話する。

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正解:1

傾聴に関する問題です。

傾聴って、耳を傾けて話を聞いていればいいんでしょ、なんて思っているかもしれませんが、コミュニケーション技術としての軽重を意識することも重要です。

話を聞くことで、どのような感情を抱えているのかを推察することができます。4番の客観的事実の把握を目的とするのではなく、その利用者さんがどのように感じているか、どう考えているのかという利用者さん側の主観的な情報の方が重要ですので、4番は誤りだとわかります。

2番と3番は関わる介護福祉職の価値観や関心を中心にしていることから、これはすぐに誤りだとわかりますね。

5番の沈黙しないように対話するというのは、沈黙もとても重要なんですよね。僕も苦手なんですけどね、沈黙。互いに沈黙を許容できる信頼関係も必要です。沈黙も重要な技術です。話しやすい環境を作ることは必要ですが、沈黙することを否定するわけではないので、これは誤りですね。

ということで、正解として選べるのは1番だけになります。


第31回介護福祉士国家試験(平成30年度)  問題29

Hさん(75歳,男性)は,脳梗塞(cerebral infarction)を発症して入院し,後遺症として左片麻痺が残った。退院後,介護老人保健施設に入所し,在宅復帰を目指してリハビリテーションに取り組んでいる。ある日,HさんはJ介護福祉職に,「リハビリを頑張っているけれど,なかなかうまくいかない。このままで自宅に戻れるようになるのか…」と暗い表情で話しかけてきた。
このときの,Hさんに対するJ介護福祉職の共感的な応答として,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 「不安な気持ちに負けてはいけません」
2 「きっと自宅に戻れますよ」
3 「Hさんが不安に思う必要はありません」
4 「不安に思っているHさんがかわいそうです」
5 「リハビリがうまくいかなくて不安なのですね」

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正解:5

不安を抱える利用者とのコミュニケーションについての出題ですね。問題文の中に「共感的な応答として」と書いてあるので、共感的なものがどれかを考えてみればわかると思います。

とりあえず、根拠もなく適当に返してしまう2や3というのは共感しているわけではないので誤りですね。共感的云々にかかわらず、介護福祉士の問題でこういった受け答えは間違いになる確率は高いでしょうね。

1番も励ますつもりなんでしょうけれど、共感しているわけではないので×ですね。

4と5がどう違うのかということですが、4番は利用者Hさんの不安に寄り添っているようで、共感しているんじゃないかと考えるかもしれません。でも、「かわいそう」というのは介護福祉職側の感情であって、これは同情しているとも言えますね。

5番は利用者Hさんの状況や不安な心情を言葉にしていることで共感をしている様子がわかります。


第31回介護福祉士国家試験(平成30年度)  問題30、31

次の事例を読んで,問題30,問題31 について答えなさい。

〔事 例〕
Kさん(75歳,女性)は,小学校教諭を定年退職した後,しばらく趣味やボランティア活動を楽しんでいたが,認知症(dementia)を発症し,介護老人福祉施設に入所した。見当識障害や記憶力低下がみられた。入所後,初めて息子夫婦が面会に来た。Kさんは息子に向かって,「ここで,国語を教えているの」と嬉しそうに語った。息子夫婦は面会を終えて,介護福祉職のところに相談したいとやって来た。困惑したような表情の息子から,「母が,学校で教えていると言った時,どうしたらよいでしょうか」と質問があった。

このときの,息子に対する応答として,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 「ここは学校ではないので,息子さんから直してあげてください」
2 「お母さんの教員としての誇りを大切にしてあげてください」
3 「お母さんの認識を改めるための何か良い知恵はありますか」
4 「認知症(dementia)が進行しているので仕方ありません」
5 「私たちも息子さんと同じように困っているんです」

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正解:2

認知症の利用者への対応についての問題です。

認知症の方の世界観に寄り添って対応することが求められますので、2番が正解になりますね。そこからもっと具体的にそのときの利用者さんの教員生活がどんなものだったかなどを聞いたりして共有するのも利用者の理解につながるしいいと思います。

アドバイスを求めに来た家族に対して、1番や5番のように逆に突き返してしまうというのはちょっと残念な対応ですよね。

1番と3番はその認識を改めさせることを前提にしていますので、これも間違いですね。

4番のような回答も、認知症が進行しているという事実を共有するという意味でなくはないと思うのですが、困っている家族に対して、具体的な解決案を何も示していないですよね。


Kさんの病状は進み,自分から話すことはほとんどなくなり,こちらの問いかけにも応えたり応えなかったり,という状況になった。
このようなKさんとコミュニケーションをとる方法として,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 沈黙を守る。
2 表情を一定に保つ。
3 開かれた質問を使う。
4 ボディタッチを増やす。
5 コミュニケーションノートを使う。

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正解:4

1や2というのは、コミュニケーションとして冷たい感じを与えますよね。認知症の方は特にコミュニケーションの温度を大事にした方がいいです。

開かれた質問は、オープンクエスチョン。YES/NOのような回答ではなく、自由な回答を得るためのものですが、問いかけに応答も少なくなっている状況なので、これは効果的ではないでしょうね。

ボディタッチを増やすというのは、親近感を与えるためにも効果的ですね。正解は4番になります。


第31回介護福祉士国家試験(平成30年度) 問題32

Lさん(30歳,女性)は,パートタイムで仕事をしながら,自宅で母の介護をしてきた。ある日,母の訪問介護(ホームヘルプサービス)で訪れたM訪問介護員(ホームヘルパー)に対して,Lさんは,「寝ている間に頭の中に機械が埋め込まれて,行動を監視されている」と興奮気味に訴えた。
このときのM訪問介護員(ホームヘルパー)の対応として,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 それは現実のことではないと説明する。
2 気にしなくてもよいと話をそらす。
3 Lさんの訴えを肯定も否定もせずに聞く。
4 監視されているのは間違いないと肯定する。
5 Lさんの感情に合わせて興奮気味に接する。

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正解:3

この問題文、混乱しますよね。

Lさんが利用者ではなく、利用者の主介護者。で、ホームヘルプに入ったMさんはLさんのお母さんの介護に来ているのに、家族から興奮気味にそう伝えられたと。

ということは、対象者のLさんは30歳、認知症などではないのだろうと推測できるわけです。お母様の介護をされる主介護者としてはまだ若いですよね。

おそらく介護によるうつや統合失調症などではないかと思いますが、問題文が複雑な割には回答はごくいたってシンプルです。

普通の関係であれば、冗談で言っているんだろうと、パッと1で「そんなわけないでしょ」答えるんでしょうけれど、興奮しながらそう言われていたら、これは普通じゃないなって判断できると思うので、これは1ではないでしょうね。

2の回答については、Lさんにとっては監視されていることは間違いないと確信している状況なので、そう返したとしても、嘘をついている・この人も私をだまそうとしているとなるでしょうね。

逆に4のように断定してしまうことや、それに乗っかって興奮気味に返すことも意味はないですね。

どう感じているのか、否定も肯定もせず、Lさんの話を受容するのが正解。3番ですよね。


第31回介護福祉士国家試験(平成30年度)  問題33

叙述体を用いて介護記録を作成するときの留意点として,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 情報を項目別に整理する。
2 問題のポイントを明確にする。
3 介護福祉職の解釈を記録する。
4 論点を明確にする。
5 利用者に起こったことをそのまま記録する。

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正解:5

叙述体って何?っていう問題ですね。

1から5まで記録としてどれも不正解ではないです。記録の中に介護職側のアセスメントを含める場合もありますからね。

なので、問題はこの叙述体っていうものが何かです。

叙述体は客観的事実に基づいて、時系列に沿って起こった出来事をそのまま書くというものです。ということで、正解は5番です。


第31回介護福祉士国家試験(平成30年度)  問題34

介護福祉職が行う報告の留意点に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 報告するときは,自分の意見を最初に述べる。
2 予定より時間がかかる業務であっても,完了後に報告する。
3 起こった事実は,抽象的な言葉で報告する。
4 指示を受けた業務の報告は,指示者に行う。
5 自分の推測を,事実であるとみなして伝える。

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正解:4

報告はできるだけ速やかに行うことと、客観的事実と主観とを分けること。

5番のように推測を事実とみなして伝えるのはそもそも報告にもなっていないですね。

事故報告などもそうですが、具体的にしていくことと、できるだけ早く報告することが重要ですね。


コミュニケーション技術のポイント

コミュニケーション技術といっても多様です。対利用者のコミュニケーションなのか、それとも職場内でのコミュニケーションなのか。それをまずは問題文から見極めましょう。

利用者に対しては支持的なアプローチをするイメージで、むやみに励ましたり・努力を強要すると不正解になりやすいので注意しましょう。

職場内でのコミュニケーションに関しては、多職種連携が求められていますので、情報をより客観的に事実を伝える・記録することなどを意識しましょう。