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第31回介護福祉士国家試験過去問題 認知症の理解

認知症の理解

第31回介護福祉士国家試験(平成30年度) 問題77

介護老人保健施設に入所した認知症高齢者が,夜中に荷物を持って部屋から出てきて,介護福祉職に,「出口はどこか」と聞いてきた。介護福祉職の対応に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 「今日はここにお泊りになることになっています」と伝える。
2 「もうすぐご家族が迎えに来るので,お部屋で待っていましょう」と居室に誘う。
3 「トイレですよね」と手を取って案内する。
4 「どちらに行きたいのですか」と声をかけて並んで歩く。
5 「部屋に戻って寝ましょう」と荷物を持って腕を取る。

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正解:4

認知症の方に対する関わり方の問題です。

相手を否定することはNG。混乱を与える結果にしかなりません。

認知症高齢者の頭の中にあるストーリーに乗っかって、その登場人物になることが大切です。

第31回介護福祉士国家試験(平成30年度)  問題78

図は,2016年(平成28年)「国民生活基礎調査」(厚生労働省)を基に,介護保険制度における要介護者と要支援者の介護が必要となった主な原因の構成割合を作図したものである。
AからEには,
・「関節疾患(joint disease)」
・「高齢による衰弱」
・「骨折(fracture)・転倒」
・「認知症(dementia)」
・「脳血管疾患(cerebrovascular disease)(脳卒中(stroke))」
のいずれかが該当する。
「認知症(dementia)」に該当するものとして,正しいものを1つ選びなさい。

1 A
2 B
3 C
4 D
5 E

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正解:3

覚えておいていただきたいことは一点。要介護状態になる一番の原因は認知症です。このデータでも、要介護状態になった人の24.8%は認知症が原因となっています。

要介護度別に見た介護が必要となった主な原因

同じ調査の中から、要介護度別に見た介護が必要となった主な要因のトップ3です。

要介護1~4までは認知症がトップです。

要介護5は脳血管疾患。脳卒中で入院して、入院中に介護保険を申請して、病院で調査をしてリハビリをして退院、というケースが多いかと思います。ただ、リハビリなどで機能が回復し、要介護状態が改善するケースは多いですからね。

要支援の方で多いのは関節疾患。変形性膝関節症とか、腰痛とか。一人暮らしの高齢者が膝や腰の痛みで買い物や掃除ができなくなるようなケースですね。

自分は地域包括で仕事していたので介護保険の申請につながる経緯をイメージしやすいのですが、なかなか現場で働いている介護職がイメージするのは難しいのかもしれません。

ただ、この問題の分野が「認知症の理解」の分野なので、ひょっとしたら?と思って問題を見ることができた方は大正解だったかもしれませんね。

第31回介護福祉士国家試験(平成30年度) 
問題79

認知症(dementia)の人を支援する施策に関する次の記述のうち,適切なものを1つ選びなさい。

1. 認知症サポーターは,認知症(dementia)に対する正しい知識と理解を持ち,認知症(dementia)の人を支援する。
2. 介護保険制度では,認知症対応型共同生活介護(グループホーム)は,居宅サービスに位置づけられている。
3. 認知症(dementia)と診断された39歳の人は,介護保険制度を利用できる。
4. 介護保険制度では,認知症対応型通所介護は施設サービスに位置づけられている。
5. 成年後見制度では,地域包括支援センターの社会福祉士が補助人,保佐人,成年後見人を選定する。

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正解:1

認知症サポーターについて出題されています。

「認知症を知り地域をつくる」キャンペーン、認知症サポーターキャラバンの活動をご紹介します。
認知症サポーターキャラバン - www.caravanmate.com

これまでも認知症サポーターに関する問題は出題されています。

問題文の中にある「支援する」というところに引っかかってしまった人もいるかもしれませんね。地域住民も認知症の方の生活を支援する枠組みの一部ですからね。

グループホームは居宅サービスではなく、地域密着型サービスに該当します。そんなこと知らないですよね。

第31回介護福祉士国家試験(平成30年度) 問題80

加齢による物忘れと比べたときの,認知症(dementia)による物忘れの特徴として,最も適切なものを1つ選びなさい。

1. 見当識障害はない。
2. 物忘れの自覚はない。
3. 物忘れが進行しない。
4. 日常生活に明らかな支障はない。
5. 体験の一部分だけを思い出せない。

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正解:2

だいたいわかるんじゃないかなと思いますけれど。

5の体験の一部だけを思い出せない、という項目に関しては、これは誤りです。体験の一部だけではなく、全部を思い出せないのが認知症です。

旅行に行って、昼ごはんに何を食べたか忘れた、じゃなくて、旅行に行った体験自体を忘れるのが認知症です。

第31回介護福祉士国家試験(平成30年度) 問題81

認知機能障害に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1. 記憶障害では,初期から手続き記憶が障害される。
2. 見当識障害では,人物の認識は障害されない。
3. 失行では,洋服をうまく着られなくなる。
4. 失認は,視覚や聴覚の障害が原因である。
5. 実行機能の障害では,ADL(Activities of Daily Living:日常生活動作)は障害されない。

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正解:3

洋服をうまく着られなくなる、これは失行ですね。

認知症の機能障害についての質問はかなり高い頻度で出題されます。失行なのか、失認なのか、見当識障害なのか、実行機能障害なのか。それが何にあたるのかを見極めることが必要です。それ自体を問うタイプの問題も結構な頻度であります。

第31回介護福祉士国家試験(平成30年度)  問題82

軽度認知障害(mild cognitive impairment)に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1. 記憶力の低下の訴えがある。
2. 日常生活に支障がある。
3. 認知症(dementia)の一種である。
4. CDR(Clinical Dementia Rating)のスコアが 2 である。
5. 全般的な認知機能が低下している。

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正解:1

軽度認知障害と認知症の違いですね。

軽度認知障害はMCIと呼ばれます。

MCIの主な定義としては以下のようなものです。

・記憶障害の訴えが本人または家族から認められている
・客観的に1つ以上の認知機能(記憶や見当識など)の障害が認められる
・日常生活動作は正常
・認知症ではない

軽度認知障害(MCI)って何? |相談e-65ねっと

第31回介護福祉士国家試験(平成30年度)  問題83

抗認知症薬に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1. 貼付剤はない。
2. 非薬物療法との併用はしない。
3. 段階的に投与量を減量していく。
4. 副作用として悪心や下痢が生じることがある。
5. ADL(Activities of Daily Living:日常生活動作)が改善することはない。

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正解:4

抗認知症薬の副作用で下痢というのはよく聞く話です。それで内服をやめたという人も少なくありません。

投与量も段階的に増やしていきます。副作用が強いときには段階的に減薬する時もあります。

認知症の貼り薬ではリバスタッチやイクセロンパッチという商品が出ています。

リバスタッチパッチ
イクセロンパッチ

貼り薬の認知症薬のいい部分って、薬を飲むことを嫌がっている方にも抵抗なく受け入れてもらえることでしょうね。あとは貼り薬全般に言えることですが、貼っている間、じわじわと皮膚を通して薬が効くので薬効の持続時間が長いことですよね。

第31回介護福祉士国家試験(平成30年度) 問題84

認知症(dementia)の原因となる疾患と,特徴的な行動・心理症状(BPSD) の組合せとして,適切なものを1つ選びなさい。

1. アルツハイマー型認知症(dementia of the Alzheimerʼs type)――幻視
2. 血管性認知症(vascular dementia)――――――――――――――抑うつ
3. レビー小体型認知症(dementia with Lewy bodies)―――――――人格変化
4. 前頭側頭型認知症(frontotemporal dementia)―――――――――もの盗られ妄想
5. クロイツフェルト・ヤコブ病(Creutzfeldt-Jakob disease)――――徘徊

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正解:2

抑うつ症状が現れやすいのが血管性認知症ですね。

特に覚えておいた方がいいのは、レビー小体型認知症と幻視・運動機能障害(すくみ足など)の組み合わせですね。

あとは前頭側頭型認知症。ピック病に代表される認知症で、衝動的な行動や人格障害などが顕著に現れます。抑制が効かず、犯罪を犯したりするのも特徴です。

第31回介護福祉士国家試験(平成30年度) 問題85

重度の認知症高齢者の胃ろう栄養法に関する支援として,最も適切なものを1つ選びなさい。

1. 主治医が導入するかしないかを決定する。
2. 家族が導入するかしないかを決定する。
3. 本人の意向や価値観の把握に努め,本人にとっての最善を関係者で判断する。
4. 成年後見人がいる場合,成年後見人が導入するかしないかを決定する。
5. 看取り期 き には,介護福祉職の判断で胃ろう栄養法を中止する。

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正解:3

認知症の方で胃ろうの方もいます。

認知症で判断できないから、ではなく、本人が本当に望むことは何かを家族や医療福祉の関係者間で検討することが必要ですね。

第31回介護福祉士国家試験(平成30年度) 問題86

認知症(dementia)の母親を献身的に介護している息子が,母親に怒鳴られてたたきそうになった。それを見ていた介護福祉職の息子への対応に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1. 「孝行息子のあなたが手を上げるなんて…」と注意する。
2. 「行政に通報します」と告げる。
3. 「認知症(dementia)だから怒鳴るのは仕方がない」と慰める。
4. 「地域にある認知症(dementia)の人と家族の会を紹介します」と伝える。
5. 「懸命に介護をして疲れていませんか」と話を聴く。

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正解:5

これ、きっと3や4を答えた方も多かったんじゃないでしょうか。

まずは家族を注意したり通報したりする1や2が違うのはわかると思います。

3のように慰めることもあるとは思いますが、怒鳴ることを肯定するのは本人に対する今後のケアにも影響があり、利用者の支援につながらないと思われます。

認知症の家族の会を紹介するのも重要だと思います。ただ、このタイミングではないんじゃないかなと。

まずは家族の思いを受け止めることが正解になりますので、正解は5になります。

まあ、悩んだ時には、緊急性が高いものでなければまずは傾聴や職場内での連携・検討などの選択肢を探すことでしょうね。

認知症の理解のポイント

認知症の理解の分野ですので、当然、認知症に関する問題が出題されるというのはひとつのヒントになったりします。

注意したいのは、認知症による行動障害についての出題ですね。これは見当識障害なのか、失行なのか、失認なのか。問題文の中から、対象者にどういった異変が起きているのかを確認していきましょう。

また、認知症の種類についての問題も要注意です。レビー小体型認知症・ピック病などの特徴的な認知症については出題されることが多いので、確実にチェックしておくようにしましょう。

認知症についての基礎知識は、学校などで勉強する機会があれば体系的に学習できるのでしょうが、現場での経験がメインだと、感覚的な理解だけになってしまいます。認知症サポーター養成講座は一般の方向けの内容なのですが、養成講座テキストには認知症の方の特徴やかかわり方などが網羅されていて非常に分かりやすいと思います。